インフルエンザの重篤な合併症として、小児では急性脳症、高齢者では肺炎があります。
死亡したのは、国立病院機構まつもと医療センター40代の看護師。
2015年1月15日、通常勤務後夕方に帰宅、午後6時頃に発熱を自覚、午後9時30分に38.6℃の熱があったので市販の解熱薬を服用して就寝。翌16日明け方から「腰が痛くて起きられない」状態になり、午前10時頃何とか近隣の診療所を受診したが待合室で急激に意識レベルが低下した。
すぐに、まつもと医療センターに救急搬送され午前10時55分到着。その時点で、瞳孔散大、四肢の麻痺、脱力が見られ、頭部CTでインフルエンザ脳症と診断。ステロイドパルス療法を実施したが改善せず、午後3時、信州大学病院救命センターに搬送されたが治療の甲斐なく、17日朝6時に死亡した。
院長の北野氏は「死亡した職員は看護師という職にあったこともあり、プライバシーを考慮した上で脳症の原因を究明するため、カンファレンスを開催し事後検証を行う予定。その結果、何らかの教訓を見いだし、他の施設の医療者とも情報共有できればと考えている。」と話している。
インフルエンザ脳症とは?
インフルエンザに感染すると、そのウィルスを異物とみなして白血球が増えます。その際に、サイトカインという様々な物質が出ます。このサイトカインが過剰に出てアレルギー反応を起こすことがインフルエンザ脳症の原因になっていることが分かってきました。(これをサイトカインストームといいます)
脳症を起こす原因として、ウィルスの量、その人の体質、その時の体調にも関係していることが推測されています。
サイトカインは、血管に作用し脳浮腫を起こします。脳浮腫が進行すると脳圧が高まり、延髄を圧迫します(これを脳ヘルニアと言います。)
脳ヘルニアが起こると意識がなくなり、呼吸が停止し、死に至ります。
上記の症例では、発熱から意識障害に至る前に医療機関を受診し、抗ウィルス剤を投与していれば救われた可能性はあります。また、インフルエンザ患者が脳症になる確率は1万人に1人とも言われており決して多いものでもありませんが、なるべく早い受診が重要である事は言うまでもありません。